授業支援システムは神か悪魔か

こんにちは。

みなさんは学校のタブレットやPCに「授業支援システム」というものが入っているのをご存知でしょうか?

 

SNSのお友達がこの、「授業支援システム」について、面白いノートを書いていたので、コメントしたかったんだけど、こんなに長くなっちゃって、やむなくブログに貼った次第です。

 

予備知識として書いておくと、私は行政関係や税務関係の書類が死ぬほど苦手だ。
字は読めるのに、ググれば良いのに、これまでわかっていても、めまいがするほど嫌いで適当にやっては怒られたり苦しんできた。
しかし、どうしても会社を起こしたかった。だから起業のための書類も手続きも全部自分でやった。そして、登記が済めば税金の手続きが待ってるのだ。
そこで相談しながらこう思った。

税理士さんも、ベンダーさんも、授業支援システムも、みーんな私からみると同じだ…。

貸借対照表とか決算ってなんだ?
「税理士さんに頼むといいですよ」
難しい会計処理もわかっていて税務署から怒られないようにしてくれます。

来年パソコンとかプリンタはどうすれば?
「ベンダーさんに相談するといいですよ」
見たことないネットワーク機器の選定や、必要なスペックなども調べて、自分では買えないレベルの数の品物を調達してくれます。

パソコン使って授業どうすれば?
「授業支援システム便利ですよ」
じゃあこれはどうでしょう。

「自分で考えるのが面倒」なことがビジネスになる。だってみんな自分でやりたくない。これから覚えるなんて辛いから。
そもそもできないこともあるから。
ただね、自分ではできないこともやってくれるからビジネスなんですよね。

授業支援システムは、目的と機能で細かく分けると(機能名は一例)

⚫︎こどもが勝手なことをしないように制御したい場合には、
「ロック」「ブラックアウト」「リモート操作」「画面転送」
⚫︎準備を楽にしたい場合には
「一斉電源操作」「配布回収」「教材テンプレート」
⚫︎端末ごとの環境が変わると次の時間に他のこどもが使うのに困る場合には
「復元」「一斉操作」
⚫︎一人一人の様子を見渡して指導したい場合は
「巡回」「モニタリング」「アンケート」「クリッカー
⚫︎いちいち席までいかずに指導したい場合
「介入からのマーキング機能」「メッセージ」「タイマー」
…まあ他の使い方もあるでしょうけれどこんな感じです。

こんな感じで使う人によって同じシステムでも、まったく違う。

正直20年前復元のなかったPCルームで夏の研修会やってた自分としては、復元は神だと思ってます。復元があるから、失敗してもなんとかなる。コンピュータの得意なことは、Ctrl +Z。やり直しがきくってところでもある。だから私は適切な設定さえすれば復元大好き。これのおかげで「何にもしてないのに変になった」がほぼ解決するんだから。
自由に外して良いならもっと良いだろう。それこそ一人一台になって、スキルがあるレベルに達した人は、機能制限を緩めてもらえれば良いと思う。未来の授業支援システムはこうであれば良いのでは。

タブレットになってから、画面提示の方法が有線から無線になると、授業支援システムでも、そのシステムから直接制御できる画面投影機器を持つものは、「投影」「提示」という機能もある。
スカイの場合サイレックスのAPは、スカイの提示コマンドで、サイレックスを動かすコマンドを呼び出せるからできる。

そういう専用の機器を持たない授業支援システムには、この「投影」や「提示」の機能は基本ない。

これらの制御機能に対し、「画面に描けるノート」などこどもが何かを作るための機能は、単体で販売されているものがとてもたくさんあるけど、それが授業支援システムにもついてるものがある。

いや、逆だ。
タブレットが出て、ノートみたいに描きたいなというニーズに応えて「ノートアプリ」がたくさん開発された。
ノートアプリが、「共有」機能を持つようになり、さらにそれが授業支援機能を持つようになったものが多い。
それに対して老舗の授業支援システムは、そこにオプション的にノート機能を載せた。
最近は学習支援ソフトとしてワープロ表計算、お絵かき、音楽、プレゼンなどの機能を持ち、人気を博してきたものが、授業支援機能を持ちはじめている。

それぞれが独立して分担していたものを食い合って、どれも似たようなものになってきたと思っている。

これらはつまり、先生方が「複数のアプリケーションを切り替えて使えない」と提供側が考えているから生まれてきたと思う。

こどもがノートで書き、作ったデータを共有し、大きく提示したり、他の作品に流用するために加工したり、複製したり。作品として先生が評価するために集めて、その評価を子供に返したり。正直どれもこれも、Windowsだろうが、iOSだろうが特殊なソフトはなくても、このあたりはできることばかりなのだ。

ここで不思議なのが「授業支援システム」は多くが苦手な人もできる、手数がかかることが軽減できる、そういうものなので、得意な人はそんなに使わなくてもできるよね?って思うのに、得意な人がこれらの機能をすみずみまで研究する人になってしまいがちだということ。
万能ソフトは、目の見えない人が触るゾウのように、実際の役目がそれぞれに違う。でも、一部の得意な人は、なぜか全部知ろうとして、全部使おうとするのだ。そのせいで、授業になったときに、授業自体や子供達の見取りよりも、そのシステムの使いこなしに目がいってしまうことがあって、公開授業などの時に限って、張り切ってやるので、システムのデモみたいになったり、うっかりネットワークにトラブルでもあろうものなら、すべてのリズムが狂って、それを見た人から「わざわざICTじゃなくても…」という定番の批評がついてしまう時もあるのかなと感じている。
これが、授業自体を重視する先生方からシステムが嫌われる原因の一つにもなっている。

そして、さらにうまく使いこなせてしまうと、そのシステムの欠点もわかるので、親切なことに、メーカーに向かってその点を指摘してあげたりする。その指摘が適切がどうかはともかく、メーカーはもうちょっと吟味すればいいのに、そこに振り回されて謎の仕様変更とか、オプションをつけまくる。
これが授業支援システムの肥大化のひとつの原因だ。

 

なんだか最近の授業支援システムは、そのデバイスを支配しているように感じる。他のアプリはなしで、その一個のアプリがデバイスを制するところまで突き進みそうな、そんな雰囲気を醸している。

 

子供は長い人生の中で、このたった数年の学校という学びのチャンスに、そこでしか使わないシステムで、ICTの本当の性質や仕組みは身につくのかな?と思う時がある。

だから個人的には、授業支援システムは、使いどころを考える必要があると思う。

 

授業支援システムは、ニーズがあったから生まれた。でも、部分的には「先生はパソコンが苦手」を前提にした作り込みなのだ。じゃあ今それを邪魔にしてる人たちが言うほど、現場でこれが嫌われてるか?というと、全くそうではない。「えっ!ないの?」と不安な顔になってしまうくらい、結構みんな好きだ。

じゃあどうすればいいのか?それは、先生が、ICT苦手じゃなくなればいいだけなのだ。そうしたら余計なお節介で儲けようとする仕事は無くなっていくだろう。

私も経理がわかるようになればいいんだ…無理っぽいけども…。

 

と、いうわけで、私たちICT支援員は本来の仕事に誇りをもって取り組むために、苦手な先生方がライザップほどじゃなくていいから、普段使うのにそんなに困らないくらいの「結果にコミット」できるトレーナーであれば良いのではないか?と思うのだ。

それは研修というよりトレーニングだ。
甘えすぎにはちょっと厳しめのサポートをするような支援がしたいのだ。それを胸張って主張できるためには、裏付けとして高いスキルが必要なのだ。
お尻を叩けないといつまでも学校は変わらない。私の思うICT支援は、寄り添って甘やかして背追い込むのではなく、免許がなくてもできることは肩代わりしてもいい、でも、免許がある人がやるべきことで、ICTスキルが足りず無駄な苦労をしてるなら、少しでもできるようになってもらって、先生のスキルをあげることが、この悲劇を生まないための最善策ではないのか?と思うのだ。

 

そして、授業支援システムは、その役割を使いたい人が使いたい時に使う、そんなスタンスであれば存在意義はあると思うのだ。

もう一度各メーカーはこれを考えてみてはいかがだろうか。