学校にこの夏ICTが導入されたら必ずやるべきこと【その1 機器導入と設定編】

学校でプログラミングの研修だと、まあノートパソコン使うことが多いので、席についてやる、そういうスタイルになりがちですが、今年の夏もおそらくモーレツなラッシュになるICT機器導入研修会は、私の場合、座ってなんて絶対やらないつもりです。

 

10年前くらいまでは実はある意味一番簡単な研修だったPC導入研修会。なぜなら商品紹介だったから。やることは決まっていて、機器の使い方を簡単に紹介するだけ。今からもう15年くらい前に教わった導入研修はそういうものでした。

そこにある事実だけを伝えればいい。なので新人さんも登竜門は導入研修会というくらいの立ち位置。あんまり上手にできなくても、大勢の前で説明をする練習っていう感じでとりあえずOKだったりしました。

3時くらいからやるので、お疲れの先生方のお昼寝時間になってるようなことも、多くありました。つまらないからというより、会場に先に来て寝てる人がいたくらい、どーでもいい、やらされ感満載の研修だったのでしょう。座学でしたしね。冷房の効いた部屋に入ってくるなり、「あー涼しい〜、お姉さん、今日は何やるの?」とか逆に「忙しいから30分で終わらせて」とか、真剣に取り組めば取り組むほど、それはそれは、こんなのやる意味あるのか?という気持ちにさいなまれる研修でした。

 

でも、自分なりにやってきて、気づいたことが多くあり、ここ5年くらいは違います。ICT機器がパソコンルームから普通教室へ飛び出したことで、試行錯誤を繰り返し、ある一つのスタイルが出来上がりつつあります。

寝かせませんし座らせません。タブレットになったので、座ってなくても作業ができるのですから。それに、もうパソコン教室の使い方ではなくなったため、普通教室に持って行って使ってみる方がずっと意味のある研修になるのです。2年前に某自治体にも研修は2回ずつやらせてほしいとかお願いしたことがありました。1回目はベタな導入研修。委員会としては入れたものを知らないと言われては困ってしまうので、全てを一旦先生方にご覧にいれる必要がありました。

これも、やはり10数年前の導入研修で現場に行ったら、前の代のプロジェクターがまだなんとビニール袋に入ったまま新品で使われていなかったり、導入から4.5年経って研修に行ったら、とっくに入っていた電子黒板の存在すら知らない先生がおられたことにも端を発します。ソフトもハードも「えっ!うちにこんなのあったの?なんだぁー学校で買っちゃったよー」なんてことも。無駄無駄無駄ァー!!!

だから導入は必要なのです。まあ集まらなくても、入ったものがちゃんと周知されるようなシステムにしてほしいところです。例えば校務のパソコンから見ればいつでも資産が一目でわかるとかね。でも、そもそも興味がない。そうすると見れるけど見ない。で、同じことの繰り返しです。だからやるんです。

 

そして、2回目は活用研修。入った機器をその学校ごとにどこに設置するか、どう使うかを体験しながら考えていただくワークショップ的な研修です。備え付けならいいのですが、未だに校内で数台ずつしか配備されなくて、持ち運んで使うものが多いですから、どうやって設置するのか?どうしたら早いか?使うとどんな効果がありそうか?どこに保管するか?など様々な具体的なことを、先生がみんな揃っている場で一緒にやります。動きの速い教頭先生などは、学校独自の管理に必要なシールとか入れ物とかを買うためにささっとメモして、「これとこれはすぐ買いましょう!」と動いてくださいます。普段の動線も一番知ってるのは現場の先生なのですから、安全で保管しやすく、そして授業の時に使いやすい場所や、設置した時にどんな感じになるかは実際にやりますので、もっとこの辺がいいかな、こっち向きがいいかななんてことも一緒にやります。いつも言いますが、動かしてしまう可能性があるものは、ベストのポジションでばみって置くことを伝えます。また、設定が必要な場合、設定値をメモしておきます。決まった場所に置いて、数字でささっと指定すればいちいち微調整する必要もありません。これは備え付けになるものでも実は同じです。小学校なら各教室でその先生の使いやすい高さや角度、中学校なら、なるべく全てのお部屋が同じ環境になることが望ましいでしょう。これは、小学校が今後もしも教科担任制になればやはり中学のような形が使いやすいと思います。

これらの作業は、できるかぎりグループに分かれて、多くの先生が触れるようにします。

何度か過去にもFacebookやその他のメディアに書いていますが、一番大事なのは、できる先生を先生にしないことです。つまり各グループに配線や設定ができる先生を分散してしまうことが多いと思いますが、それはやりません。苦手チームと得意チームは分けます。苦手な人!と言って手を挙げてもらい、チームにします。こうすることで、まずさっぱりわからないという人には自分たちで相談して説明書(導入テキストに設置の仕方をわかりやすく書いておきます)を見ながら、そこでその線はなぜそこに挿すのかなども理解しながら自分の手で設置してもらいます。大人も子供も一度やった方がいい、生活にも直結する知識です。それから逃げているうちは、学校のICT化なんて実現しない。

こうして、できる限り全ての先生が、自分ごとにしていただく、そういう導入をします。

 

でもきっとこんな研修をやっているところはおそらくまだ多くないと思います。すごく手間がかかる研修です。一つの自治体だけではないので、2年前は、36校2回ずつとか、50校とかそういう単位のお仕事になりましたので、当然一人では回りきれません。この研修以外にもプログラミングなどの研修がとても多いためです。

そのため、研修講師を別途5〜6名からもっとたくさんの時もありますがこのためにアサインします。しかし、この人たちにも同じような導入説明と、活用ワークショップをやってもらうためには、また下ごしらえがモーレツに大変です。事前準備のための手順書、注意事項、話の運び方などを現地で何度も試しながら、丁寧につくります。そして出来上がったものをメンバーの前で一度やってみせて、あとはシナリオやマニュアルを渡して任せます。

 

事前の下ごしらえがないと、この研修の目的がわからなくなるので、目指すものを明確に示して、やるべきことは文書にしてあとは各自の力に委ねます。(スキルによってはかなり手取り足取りになることもありますが)

ここまでやってようやく始められるので、この夏はもう恐ろしい数の案件が待ってることがわかっていますから、なんだか怖いです。

 

でも雇ったインストラクターさんには、「ああーこのくらいならできますね」とか余裕みたいな顔で言われちゃう事も結構あるんですけどね…まあ、一般的なインストラクターはシナリオなどが決め打ちのことが多いですから、初めて会う人は、私が喋るところしかやってないと思ってます。仕方ないので、「そうですか、それは頼もしい、よろしく!」と任せますが、そういうものの言い方をする人は、自信過剰にならず慎重に、と注意をしても自分のことだと思わないので響かず、なのに、後々トラブルが起きるのがほぼ必至なので、さりげなく当日ついていったりしてます。イベントのコンパニオンと違って、トラブルシュートも自分だということが言っても理解できない場合が多いです。もう一個ずつ教えるしかないのです。

 

ちなみに、こうやってやり取りをしていると、この後トラブルになる人、よく働くのでリーダー格になるけれど、うっかり会社の方で、リーダーにしてしまうとアウトな人、逆にプレイヤーとしても良いのだけどリーダーとしてステップアップしてほしい人、技術的に高いので、同じプレーヤーとして難しい案件をお願いしたい人などは、大体この時点で見極めてます。

今のところほぼ当たってるので、見るポイントは間違って無いと思います。

 

こんな風に毎年やっていますが、本当はこの活用研修に当たる部分を先生方が自分ごととして、学校内でみんなで使うことを考えようと動いてくださればいいなぁと思うのです。

支援員さんを入れてください。面倒なシール張りや場見る仕事なら、全部やってもらえるでしょう。ICT支援員がもっと派遣され、意味のある支援をできる人が育成できるようにしたい。

本当に心から思います。