プログラミング明日会議から私の明日

昨日のイベント「プログラミング明日会議」について久しぶりに時間ができたので書こうと思う。

6月16日(土)、新川の内田洋行本社ビルで、みんなのコード主催の「プログラング明日会議」というイベントがあるよ、と営業の人から聞いて、運良く日程が空いていたので申し込んでみた。会場の手伝いではなく、参加者として。そのほうが自分には良い。

会議の内容は、文科省の方の「プログラミング教育」に関する講演から始まり、授業で様々なプログラミングに挑戦した先生方の実践報告。これも決してみんなのコードの宣伝ではなく、「micro:bithttp://microbit.org/ja/を使った理科の授業事例と、もうお一人は主に「PETS」というプログラミング教材https://4ok.jp/pets/の実践事例だった。

その後には、自社製品だけでなく、他社の商品の紹介と体験会があって、新川本社ビルの他の階に、体験できるスペースを設けて、参加者グループ毎に、ツアー形式で回った。

内田洋行本社ビルなので、7階にあるフューチャークラスルームの実演と、最近うちの商材になったSONYの「MESH」http://meshprj.com/jp/

LEGOなども簡単に紹介があった。これは、今年私も研修をいくつかやるので、レポートはまた別の機会に。

そして富士電機の「動かしてみよう!」というプログラミング環境とロボット体験、そして、みんなのコードとして、杉並区立天沼小の校長でいらした、福田晴一先生が自らmicro:bit体験を担当された。何より先生方のカジュアルな姿が新鮮だった。

 

このツアー型の展示は以前お邪魔したみんなのコード主催のイベントならではのやり方だなとその時のことを思い出した。海外の医療機器展示会なんかはこの形式だ。全ての展示ブースに、参加者全員にアピールする機会を与えるとともに、見る側も選り好みして、新しいものを見落とすリスクを軽減している。私は個人的にこのツアー形式は好きだ。時間が長い展示形式の時は、あとでもう一度そのブースを見に行くこともできるし、誰かが長時間独占して説明を聞き損ねることもない。今回は短時間でのツアーのみだが、さわりがあれば、後は調べればいいことなので、出会いが多い方が良い私にはありがたかった。

 

ツアーから元の会場に戻り、最後に、みんなのコードの提供している「プログル」https://proguru.jpの紹介と体験会、そして利根川代表の講演があった。

「みんなのコード」のイベントなので、このブログでは、この「プログル」について書こう。
みんなのコードというと、以前から知っている人は「アワーオブコード」http://hourofcode.jpを思い浮かべると思う。しかし、子どもや保護者向けのプログラミングイベントとは異なり、先生向けイベントは、実践事例発表だけでなく、様々なプログラミング教材や環境を提供するメーカーとの出会いの場でもあり、私もそこで出会ったものもいくつかある。

しかし、ここ最近、みんなのコードには、現場で教鞭をとっておられた先生方が参戦しはじめた。そして独自のコンテンツを作っている。それが「プログル」であり、またもう一つ、「プロカリ」というサービスも。https://procurri.jp

 

あくまで個人的な感想なのだが、リリースが早い、実行が早いのが今時の起業家らしいとも言える。とりあえず出してしまう。コンテンツが少なくても。私はそのスピード感が良いと思う。他社とのコラボレーションも早い。分け隔てがない。情報が多いらしいが、私は先生ではなく多くの現場を支援する人たちを支えるため、個人的には情報はいくらでも欲しいし、あくまで、私の仕事の仕方の性格上「いいじゃん」と思う。


実は、みんなのコードに参加した先生方の中には、偶然だが私自身がお仕事で関わった方がおられる。プログラミングというと、算数の「多角形の描画」が良く話題になる。これをみんなのコード提供の「プログル」で提案する竹谷 正明先生だ。
今はみんなのコードで、指導者養成主任講師としてご活躍されているが、つい最近までは小学校の先生でいらした。私の竹谷先生との出会いはもう5年ほど前になる。

まだ小学校勤務だった、竹谷先生の自治体に、iPadが導入されたのが今から5年前。その経緯やその時のことはそれはそれは鮮やかに覚えている。その話は非常に長くなるのでここには書けないけれど、その時まだタブレットを活用することに戸惑いを隠せない現場を救ったおひとりが竹谷先生だと思っている。私はその竹谷先生の小学校の担当ICT支援員兼、教員研修と支援員のとりまとめ役だった。私自身が当時非常にiPadが好きで、個人で使いまくっていたのもあり、iPad導入時にも深く関わったおかげで、大変多くの経験をさせていただいた。
短期間で交代を義務付けられていたので、担当支援員自体は1年で交代したが、その自治体の支援コーディネートをずっとつとめている。

プログラミングが盛んに話題に上がるようになった頃、竹谷先生が現場で算数にiPadでプログラミングをとり入れた公開授業をされるということで、当時の担当支援員さんととともに伺う機会をいただき、協議会にも参加させていただいた。ここで実践されたのが多角形の描画だった。メインゲストはみんなのコード代表の利根川氏だった。

あの当時竹谷先生は小学5年生でも、算数の学力が高い、少人数のクラスにこの多角形の授業の試みをされていた。公開授業の時に使用したのは、scratchベースのiPadアプリ「ピョンキー」(App名: ピョンキー、デベロッパ: SoftUmeYa)で、この授業を実践された。

その時にはまだプログルは当然生まれていなくて、この自由度の高いアプリで、実践者も少ない中、児童にその使い方から丁寧に教えられて、授業があっちこっちに行ってしまわないよう、ずいぶん工夫されておられたのを覚えている。それはなにかを制限するというよりも、子供達が課題に興味を示して取り組むような導きがあったからだと思う。できすぎる子が退屈したり、できないからとふてくされることなく、ずっと楽しそうにチャレンジできたのは、竹谷先生の授業力に他ならないだろう。

プログラミングを授業に取り入れる試みはその前にも別の自治体などで少しだけ始まっているのを知っていたけれど、まだ数が非常に少なかったころだ。

子供達にiPadだけをひたすら触らせるのではなく、時には先生自身が被り物をしてキャラクターになりきり、子供達に間違えたポイントに自ら気づかせる工夫や、黒板の隣には大きな電子黒板、反対側には小さめだが実物投影機と繋がったモニタも駆使して、それまでに多角形の基本はしっかりと教えた上で、教科書に載っていない形まで広げて、作図してみることを手書きでなく「プログラミング」によって実現していると感じた。

当時はさすがにこれだけの準備と様々な機器を操作しながらは、かなり使い慣れていなくてはできないと思ったけれど、プログラミング自体の取り組みは、支援や教員研修が仕事の私に、この価値を説明するのに十分なエビデンスがもらえたと感じた。

動画が鉛筆と定規、分度器、コンパスで書くのだとしても、その方法でなぜ書けるのか?を理解しなくては意味がない、ただの手先の訓練だ。しかし、いつも感じるのは、ICTは、その手先の器用さや道具の良し悪しを加味せずに、頭で想像したこと、論理的に考えたことを実現、検証するために活躍する。これは時が過ぎても未だやはり変わらない。コンピュータは人にできないことができると確信できる。

 

「明日会議」では、実際に児童の立場になって、竹谷先生の模擬授業を受けたが、初めてみたときの実践から比べると、日本中を飛び回って鍛え上げたその授業はかなりパワーアップしていた。当時少し疑問に思った部分も、指導案でわかるようになっていたし、何より今は「先生」でなく、プログラミングで授業を良くするために、そのために作ったものを伝える立場として、オーディエンスが欲しがっているものを的確に与えていることは、「先生」であった経験を良い意味で活かしながら、そこはビジネスとしてニーズに応えていると感じた。

たくさんの方がお話しされたが、今回一番眼が覚めるようなパフォーマンスだったと思う。

プログルは、ある決まったテーマをプログラミングで解決、発展させるための教材だ。

竹谷先生の実践が背景にあるからこそのあの多角形のプログルには命が宿っていると感じる。

なにしろ、環境に左右されずネットワークさえあれば、スマホでもパソコンでも、問題なく動作する。サイトも軽い。そこだけでかなり差は大きい。そこは本当に各社見習って欲しい。軽さと確実性。それだけで先生は安心する。

常日頃展示会や、支援している学校に持ち込まれる様々な教材には、本当に様々なものがあるが、それらには命が宿っているものと、そうでないものがあると実感する。竹谷先生のお話は素晴らしく分かり易かった。さすが、国語専門の先生でいらっしゃる。本当にわかりやすい。そんな竹谷先生が何度も何度もやってみてブラッシュアップしたからあのプログル多角形コースがあるのだろうと思う。

しかし、あの教材から、添付された指導案からその授業でやることを読み取りきれない、またその現場を見に来ない業者には、真似したものを作っても命が宿らないように思っている。まるっと指導案ごとコピーすることがない以上、そこの意味をわからなければ、変えてはいけない部分を勝手に変えてしまうかもしれない。また、現場への説得力に欠けるかもしれない。

なので、現状プログルは、登録なしで無料、指導案やワークシートもダウンロードできる大変使いやすいサービスだが、竹谷先生のデモを聴くことで使い方から目的も知ることができた。

コースを最後まで体験すると、自由に作図してみるコーナーがある。そこで、サンプルにあった、「45角形」という課題は、なぜ45角形なの?というところがはじめ私にはわからなかった。そこには、多角形の1つの角の大きさと角の数の関係を考えた時に出てくる、掛け算の左右を入れ替えるような子供の純粋な発想から生まれるものなのだが、それは先生のご説明があって、ああそうかとわかった。

この子供のひらめきとチャレンジから、多角形の辺の数を増やしていけばだんだんと円に近づいていくということに気づくきっかけになるのだが、あくまでそれは毎回起こることではないだろう。

 

多くの実践を積んでブラッシュアップされたデジタル教材は、ともするとそのやり込んだ先生が機能を盛り込みすぎて誰も使えなくなってしまったり、シンプルだとしても使い方の細かいところで属人的なものに左右されてしまう恐れがある。

そういった意味で、今回後半のプログル体験会は、指導案と教材のみならず、竹谷先生のこの話が付いてきて初めて響くものがあるため、ひとつひとつの意図がユーザーにわかるような、動画をつけるとか、何か捕捉が欲しい気がしたのも確かだ。ただ、動画には情報が多すぎるため、取り違いや揚げ足取りもあるだろう。

scratchでできることをなぜプログルにしたのか。そこが現場を慮ってのことだと、しっかり伝わるものなら、無駄に叩かれることもないだろうけれど、そこを冷静に見られる人ばかりではないと思う。

ただ、支援する、やらなければならないと困っている先生方に、例えばコンピューターで作図をすることで、手では時間的にも技術的にも書ききれないものを体験できることがコンピューターで、プログラミングでやってみるメリットであるという気づきを先生方に見せられれば、そこから、どの教科でも何かその価値を示せると感じた。ただ、その教材研究は、今の先生方には時間的に厳しい。そして、今アナログでやっている授業を越えることを説明できるものでないと、ほとんどは受け入れてはもらえないだろう。

「プログル」のような教材に頼るだけでなく、こういったものからヒントを得て、自分がこれからやる単元で、子供達により多くの発見や体験を与えたいと思った時に、私たち支援をする者はそれを形にする手伝いがしたい。

簡単なことではないけれど、手がかりがないわけではないと思っている。

自由度の高い、しかもコーディングするより比較的簡単に組めるブロックプログラミング環境は、そういった現場のニーズに応えるには良い道具だと改めて思った。

 

 

さて、この会に参加して、帰りの特急の中で私も「明日」のことを考えていた。ここからは今の自分の頭の中だ。

教員に安心感を与えられるかもしれない、教材の提供、情報の提供がされはじめた一方で、子供達はどうか?

プログラミング教育をこれから学校で取り入れていく際に、先生にはこうしたサポートが数多く出始めた。子供達はどうなのか。学校ICTを支援してきた身として、子供達は、授業で理解を深めたり、たくさんの体験を短時間で実現できたり、友達と考えを共有したり、そこには、あくまで授業における目標が優先で、「プログラミングは目的ではない」が実現されているものがある。(モーレツに突っ込みたい人がたくさんいそうだが、ちっぽけでなんの力もない個人の意見だと見逃してほしい)これで先生は少し安心できるかもしれない。

もっと使いやすくなっていけば、「効率化」にも大きな貢献をするはずだ。プログラミングで新しく得られるものの一部をみんなに示してくれるのだから。

限られた環境で目標に到達するために必要なツールだけに絞って学習する。それが今の学校ICTだ。

でも、本当は子供はもう生まれた時からこれらに囲まれて生きてきている。

今ブームとも言えるプログラミングやデジタルの子供向けコンテンツやイベント、塾などは何をやっているか先生方はご存知だろうか。

そしてその主催者たちは、子供をどうしたいからやっているのか。いや、保護者は何を求めてそこへきているのか。

 

ひとりの親として、学校は生きていくために必要な基本的な教養を身につけて、より幅広い選択をできるように社会にある様々なことを知り、体験できるところであってほしい。でも、ICTは新しすぎて速すぎて、本当のところは誰も教えられないんじゃないかと思っている。

ただ、長年ICTと共に仕事をしたり楽しんだりしてきて、ちょっとだけわかるのは、「ICTはこれが得意だから、原理的には多分こんなことも可能なはず」という感は養えるということだ。

先生方がより効率良く、今まで不可能だったことを実現するためのICTとは別に、子供達が手に入れるICTの恩恵は何なのだろう。

もしかすると、それは見知らぬ生き物を捕まえてきて飼ってみるような、そんなことかもしれない。じゃあ子供達は好きにさせればいいのか?と言えば否だ。先生は見知らぬ生き物を子供が連れてきてしまった時、とにかく一度離して、それが暴れないように隔離し、調べて、扱い方がわかって危険が少なければ、飼育することも考えるだろう。すでに近くで遭遇するかもしれない生き物については、危険なものはあらかじめお便りを出したり張り紙や学活などでお話をするだろう。保護者だって我が子を守るために、その生き物の生息地や、何をしてはいけないかくらいは興味を持つだろう。(持ってほしいよ…)そんな風に、子供たちと一緒に体験し、育ててみて一緒に学べるのは、生き物や植物の以外では多分どの分野よりこのICTだと思う。先生がプログラミングを、ICTを楽しめることは悪いことではなく、生き物と同様、はっきりわかっている危険からはあらかじめ防御し、止めすぎてはいけないんだと思う。窓から蜂が入ってくるかもしれないから、窓は絶対開けないなんてあるだろうか。でも逆に体験した方がいいからって、教室中をジャングルみたいに草生え放題、生き物放し飼いにするだろうか。そう考えて、やってみてはどうだろう。保護者も責任感を持って参加して、理解して。

一方的に学校に保育と教育を押し付けるのではなく、自分の価値観と都合だけを押し付けるのではなく、一緒に学ぼう。まだまだ学ぼう。

そんな風にICTと共存できる学校であることが理想ではないだろうか。

妄想が膨らみすぎて、イベントレポートから飛躍しすぎたかもしれないけれど、今私が思うICTの明日はこんな感じだ。