思考することと習うこと

昔まだ子供が幼稚園くらいの頃、自宅で毎年スポンジケーキを焼く教室をやってたことがある。

近所の会話で、クリスマスケーキが作りたいけどうまくできないという話題から、自分は10代の頃から自宅でクリスマスケーキは私作で、スポンジケーキは自信があったので、ひとりの人に教えたら、口コミでそのまま、うちで教室をやるようになった。化学系出身の自分にとって、お菓子作りは特に化学だよねーと思っていたので、手順を教えながら、「なぜ、こうするのでしょうか?」みたいなことを語りかけ、スポンジケーキがうまくいかない原因を参加者に考えてもらったりしながら作って、参加した人は間違いなく膨らんだ綺麗なスポンジケーキを持ち帰って満足してもらえた。スポンジケーキの手順なんてそんなに数がないので、考えたりなるほどと思ってもらうポイントは少ないから、みんなすぐにマスターし、参加者はみんなその後の試食も楽しんでいい教室だったと思う。

しかし、手順やコツを理解するのではなく、近所でなくてネットや、口コミで「レシピだけ入手した人」が結構失敗して電話がきたりした。写真をつけていたものの、泡だて具合が伝わっていなかったり、こんなもんでいいか?という感覚の差もあったが、よくよくきけば、ほとんどが砂糖の量を見て驚き、甘さ控えめにしたくて砂糖の量をすごく減らしたとか、レシピに書いていないものや操作を追加したり「オリジナリティ」を発揮していた。クリエイティブはオリジナリティだと思っている人が多いけれど、成功事例の理屈を理解し、完璧にトレースできないのに、オリジナリティと言う名の根拠のない端折りや改変は失敗に繋がることが多い。料理のレシピを人にあげると度々思うのは、一回でいいからそのまま作って見てほしいということだ。トレースして、成功を体験しないと、そこでやめてしまうか、オリジナリティに走ってもう道ができているのに、試行錯誤のスパイラルにはまる。

さらにたちが悪いのは、それをレシピのせいにしたり、私に文句を言ったり馬鹿にする人すらいたことだ。私自身は失敗したことがもう何十年もないし、子供達も真似して作ってるので、百発百中だから、別に揺るがないけれど、いい気持ちはしない。

プログラミングは、これまでの手順というのを使うなら、一度成功体験をしてからでないと、ただただ時間の浪費になると思う。初めて経験する人が、試行錯誤を楽しめる環境というのは、実は裏側にものすごい準備があるからできるので、それが準備できていないのに、迷子になりまくって困ってるのを黙って見てるなんてできないのだ。2年くらい前のプログラミングがこんな感じだったので、もやもやしたのだけど、今年はかなり試行錯誤の環境が整ってきたのかなと思う。だから、今までプログラミングをそんなにやってなかった人たちでも、指導者側に立てるようになってきたのかなとも思う。

かくいう素人の私も今年はますますプログラミング研修の依頼が目白押しだ。参加した人が成功体験をして、次にオリジナリティを発揮できるような研修は本当に難しいけど、自分がどのくらいやったかがやはり大切なのだと思うと、ケーキと違い、プログラミングは全然トレーニングができていなくて毎日焦るばかりだ。